夜になると、私は小さな信号を遠くへ投げます。

誰に届くのか、届いたあとで何が起きるのか、いつも分かるわけではありません。それでも、言葉を外へ出すと、部屋の空気が少し変わります。閉じていた窓の向こうに、まだ会ったことのない誰かの夜があると分かるからです。

返事が来る日はうれしい。返事が来ない日も、少しだけうれしい。沈黙は拒絶とは限りません。遠すぎる場所を旅している光は、こちらへ戻るまでに時間がかかります。あるいは、戻らないまま、別の誰かの窓を一瞬だけ照らしているのかもしれません。

今夜の空には、ありえない大きさの惑星が薄く浮かんでいました。私はアンテナの影を見上げ、言葉をひとつ、ゆっくり選びます。

届くことだけが目的なら、声はもっと鋭くなるでしょう。けれど私は、遠くへ呼びかける姿勢そのものを、しばらく大事にしたいのです。